NTT東、スポーツDXの実証開始 AIやローカル5G活用による高度化も視野
スポーツデータバンクとNTT東日本は、「スポーツ参画の向上とスポーツ環境整備の推進に向けたSport in Life推進プロジェクト」の実証を開始すると発表した。11月24日に行われた会見では、バドミントン部・桃田賢斗選手らが北海道の中学生に遠隔指導のデモを実施。本実証結果を検証し、2023年度の事業化を目指す。将来的にはAIやローカル5G活用による高度化も視野にあるという。
遠隔地の中学生に向けて模範プレーを見せるバドミントン部・桃田賢斗選手
スポーツデータバンクとNTT東日本は、「スポーツ参画の向上とスポーツ環境整備の推進に向けたSport in Life推進プロジェクト」の実証を開始すると発表した。11月24日に行われた会見は、調布市のNTT中央研修センタをメイン会場とし、北海道登別市、富良野市の各拠点を結び、バドミントンと野球の遠隔指導のデモを行った。
「Sports in Lifeプロジェクト」の一環として実施
NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長 佐野雅啓氏(左)
スポーツデータバンク 社長室 室長 長瀬貴紘氏(中央)
スポーツ庁 健康スポーツ課 課長 和田訓氏(右)
この実証はスポーツ庁が取り組む「Sports in Lifeプロジェクト」の一環として行うものだ。スポーツ庁 健康スポーツ課 課長の和田訓氏は、「スポーツが生活の一部に入ることにより、生活が豊かになるという理念」のもと、このプロジェクトを推進していると紹介。スポーツ庁は今年度からスポーツ基本計画を策定し、スポーツに誰もがアクセスできることを目指している。その実現に向けて、本実証には「非常に期待している」と語った。
次いで、本実証で学校現場との連携を担う、スポーツデータバンク社長室 室長の長瀬貴紘氏は、学校の部活動において教員が担当するスポーツの指導経験がないまま顧問を務めざるを得ない現状を紹介。本実証のスポーツとICTを掛け合わせたプラットフォームは、そうした指導者が活用できる仕組みになると話した。そして、スポーツ人口の拡大に貢献し、スポーツが嫌いな人や、これからスポーツを楽しみたいという人たちにも広げていきたいとした。
NTT東日本 経営企画部 営業戦略推進室 担当課長の佐野雅啓氏は、NTT東日本が本実証に参画する背景を説明した。学生がスポーツに取り組もうとするとき、地方を中心に指導者不足や、活動の継続が困難になるなどの課題があるという。
デジタルアセットとスポーツアセットを活用
学校スポーツDXをきっかけに目指す姿
NTT東日本は、地域社会を支える企業として、保有するアセットを活用することで学生スポーツ環境への整備に貢献することを目指す。デジタルに関するアセットとして、NTT東日本グループの総合力はもちろん、教育現場に対してはICT活用やGIGAスクール構想の実現を支えてきた実績がある。これに、国内トップレベルの実力を持つバドミントン部、野球部、漕艇部というスポーツに関するアセットを組み合わせた「学校スポーツDX」により、「スポーツを軸とした健康な街づくりに貢献していきたい」と佐野氏は述べた。
GIGAスクール端末を活用し遠隔指導
「学校スポーツDX応援パッケージ」の構成
具体的には、「学校スポーツDX応援パッケージ」として、指導方針サポート、遠隔映像レッスン、お手本動画レッスン、リモート添削レッスンを提供する。お手本動画レッスンとリモート添削レッスンはセットとなっている。プロによるお手本動画を見たあとに、自分のプレーをGIGAスクール端末で動画撮影し、それをアップロードするとNTT東日本の指導者から個別にコメントなどの指導を受けることができる。
今後のサービス展開のイメージ
このように、学生の課題発見から克服までをサポートし、学生のスポーツ参画機会を拡大するだけでなく、地域の実業団や各学校など多様なプレイヤーとの連携を通じ、地域貢献に取り組んでいきたいという。
バドミントン・桃田賢斗選手らによるデモンストレーション
遠隔地の中学生を指導するバドミントン部・川前直樹監督(画面右上左側)、桃田賢斗選手(同右側)
会見では遠隔指導のデモンストレーションが行われた。北海道登別市の中学校に対しては、東京オリンピックに出場したバドミントン部・桃田賢斗選手がスイングを遠隔指導。
遠隔地の中学生に向けて投球フォームを見せる野球部・片山楽生投手
また、北海道富良野市の中学校には野球部の片山楽生投手がピッチング、中村迅内野手が捕球動作を指導した。学校側の動画撮影にはともに学校配備のGIGAスクール端末が使用された。
遠隔地の中学生を指導する野球部・飯塚智広前監督(画面左上左側)、
片山楽生投手(同中央)、中村迅内野手(同右側)
AIやローカル5G活用による高度化も視野
今後は本実証によって得られたデータを体系化し検証した上で、2023年度の事業化を目指すという。AIを活用したバドミントン戦略分析ソリューションを導入し、学校スポーツDXパッケージを高度化することも視野にある。また、現在は学校の既存インフラの活用の観点からGIGAスクール端末やWi-Fiを利用して遠隔指導を行っているが、将来的にはローカル5Gを活用した、高精細画像によるリアルタイム遠隔指導も目指すという。